前回は、1990年代の北欧3国における炭素税導入について記載しましたが、今回は排出量取引制度(ETS:Emissions Trading System)について説明します。

■排出量取引制度(以下ETS)とは?

ETSとは、温室効果ガス(GHG)の排出に価格を付け、排出枠を売買することで削減を促す制度です。  企業ごとに排出量の上限となる「排出権」を決め、排出量の上限を超過する企業が、上限を下回る企業から「排出権」を購入することができる仕組みであり、「排出権」の価格(炭素の価格)は需要と供給によって決まります。

■ETSを導入すると対象事業者はどのような行動を取るか?

国がETSを導入すると、対象事業者は排出量の上限を超過しないように、一般的に以下の3つの行動を選択します。

選択肢①・・・自身で排出削減を行う 選択肢②・・・他の事業者から余剰排出枠(排出権)を購入する 選択肢③・・・オフセットクレジットを活用する

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これらの行動を通じて温室効果ガスの排出削減に結び付くと推定されており、取引価格が高くなれば温室効果ガスの排出量の削減が加速すると考えられます。

■EUの取り組み

EUでは、大規模排出者(約2,300社)に参加を義務付け、2005年からEU-ETS(EU排出量取引制度)が開始されました。  発電については再エネ、原子力などの代替発電手段が存在することから全量を有償オークションによる割当とし、鉄鋼等の一部の排出量が多い産業部門については無償割当(鉄鋼業は7年分の無償枠)が設定されました。それ以外の産業部門では一定割合の有償オークションが導入され始めました。  2023年には制度を強化し「EU ETS Ⅱ」や「炭素国境調整メカニズム(CBAM)」を導入し、対象範囲を拡大しています。

■韓国の取り組み

韓国では、平均CO2排出量が多い約600社を対象として、2015年から段階的にETSを導入しています。導入当初は100%無償割当とし、その後、一部産業において有償割当を段階的に導入中です。政府が排出枠を配分し、企業は余剰分を翌年に繰り越したり、将来年の排出枠を前借りしたりでき、オフセットクレジットも活用可能とするなど柔軟性がある制度となっています。2026年に対象企業の排出削減義務が厳格化されます。

■中国の取り組み

中国では、年間CO2排出量が多い、石炭・ガス火力を有する約2,000社を対象として、2013年から省政府でパイロット事業を実施し、2021年から電力事業者を対象として全国規模で開始しています。また、中央政府主導で制度を整備し、2027年までに全国温室効果ガス自主削減取引市場が重点分野を全面的にカバーすることを発表しています。

■日本

日本では「GX-ETS(グリーントランスフォーメーションETS)を2023年から開始しています。2026年4月からは、年間10万トン以上のCO₂を排出する事業者(400社程度が対象)に参加を義務付け、本格稼働します。  排出枠の割当と取引を通じて、脱炭素と産業競争力の両立を目指しています。

世界各国でETSが義務化されており、日本でも対象企業は絞られるものの、2026年4月から本格的にETSが始まりました。これにより大手企業の脱炭素化の動きが加速し、大手企業と中小企業との取引にも波及していくものと考えられますので、準備を着実に進めていく必要があります