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先日、知り合いの製造業の社長さんと話していて、「うちも省エネの補助金、そろそろ本気で考えないとまずいかな」という一言が出てきました。数年前まで「余裕があれば申請してみようか」くらいの温度感だった話が、いつの間にか経営の本題として語られるようになっている。それを聞いて、ああ、この数年でずいぶん空気が変わったなと感じました。

GX(グリーントランスフォーメーション)関連の補助金について調べていると、同じような感覚に何度も出会います。数年前と今とでは、同じ「補助金」という言葉でも、求められているものの質がまるで違うのです。

2022年頃は、正直なところ「使えるならとりあえず申請してみよう」というくらいで語られることが多かった制度が、今では「自社の脱炭素戦略の中でどう位置づけるか」を問われるものに変わってきています。そしてこの変化は、大企業だけの話では終わっていません。取引先からの要請、補助金の申請要件、金融機関の見る目――中小企業の日々の経営判断の中に、じわじわと入り込んできているのが実情です。

この5年間を、単なる制度の変化としてではなく、「補助金を確保するために、中小企業に何を求められるようになったか」という視点で振り返ってみると、見えてくるものがあります。今回は、その変化を一緒にたどってみたいと思います。

2022年 求められたのは「知っているかどうか」だけだった

すべての起点は2022年2月、経済産業省が「GXリーグ基本構想」を公表したところにあります。440社が賛同したものの、当時はまだ制度というより「一緒にやりませんか」という呼びかけに近いものでした。

GXリーグについて

背景には、前年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻があります。エネルギー価格が高騰し、安定供給への不安が世界中に広がっていた時期でした。つまり2022年のGX政策は、理念というより「エネルギー危機への対応」という、かなり切実な事情から生まれたものだったわけですね。

この年、中小企業に求められていたのは、正直なところ「制度の存在を知っているかどうか」くらいのものだったと思います。12月にはさらに要件を緩和した「エントリー」類型もでき、間口はどんどん広がっていきました。使えるものは使う、くらいの軽さで向き合えた時期だったのではないでしょうか。

2023年 「使い分ける」視点が求められ始めた年

2023年5月、GX推進法(正式名称:脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律)が成立します。「脱炭素、エネルギー安定供給、経済成長を同時に実現する」という、日本のGX政策の骨組みがここで初めてかたちになりました。20兆円規模のGX経済移行債の発行や、「成長志向型カーボンプライシング」という将来の炭素価格づけの構想も、この時期に打ち出されています。

GX実行会議

4月にはGXリーグが試行段階に入り、排出量取引が実際に動き始めました。7月には「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」が閣議決定され、政策の方向性が具体的な戦略文書として整理されます。

中小企業に身近なところでは、事業再構築補助金のグリーン成長枠が、9月の第11回公募で「エントリー」「スタンダード」という2段階の構成に整理されました。従業員規模に応じて100万円〜1億円という幅のある補助額が設定され、企業の体力や取り組み内容に応じて「使い分けられる」制度に育ってきた年だったと言えます。