タイトル:現場改善×IT×環境価値で切り拓く新時代の「ものづくり」
株式会社三静工業 取締役 製造部 今井様、取締役 部長 榊原様、経営企画部 武田様
静岡県産業振興財団 企業脱炭素化支援センター 業務アドバイザー 大橋昌弘


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会社概要:株式会社三静工業
所在地:静岡県三島市松本181
設立:1966年(昭和41年)
従業員数:100名
株式会社三静工業は、「未来への挑戦…」や「Global TechnologyへのChallenger」を掲げ、ダイカスト(金属製品)の「一貫生産ライン」による製造販売を主軸としている静岡県の企業である。「より美しくより高精度な品質づくり」を原点に据え、高い技術力で良い製品をより早く、より安くお客様に提供する体制を整えている。 主要な強みであるダイカスト製造においては、金型設計から金型再生、高度な鋳造技術、徹底した品質保証に至るまでを自社で一貫して行うことが可能である。未来のダイカスト技術に積極的に取り組んでおり、お客様の多様なニーズに応じた製品づくりをスピーディーかつ低コストで実現できる点が強みとなっている。また、サステナビリティや自然環境の保全にも注力し、SDGsへの取り組みや環境方針・BCP・CSR方針の策定を行っている。さらに、こうした環境への貢献が高く評価され、2025年度の省エネ大賞において「中小企業庁長官賞」を受賞しており、持続可能で環境に配慮した次世代のものづくりを強力に体現している
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大橋:環境に配慮した取組に着手したキッカケを教えてください。
担当者:「一番のきっかけはお客様からのご要望でした。2023年の12月頃に、取引先様から将来のカーボンニュートラルに向けた取り組みについて、ご要望をいただいたのがスタートです。 実はその取引先様自身がすでにSBT認定を取得されており、『中小機構様で無料の支援メニューがあるので、ぜひ参加してやってみないか』とお勧めいただいたんです。 社内でもそのお客様からの宿題に対して『ぜひ自社でもやろう』と熱意を持ったメンバーがおり、まずは3人ほどで取り組むことを決めました。そこから中小機構様の講師の方から3回直接ご指導を受けました。 その指導内容が非常に良かったため、単発で終わらせるのではなく、社内で『SZP(三静ゼロカーボンプロジェクト)』という推進プロジェクトを立ち上げることにしました。そして、自社でもSBT認定の取得を目指し、教えていただいたバックキャスティングの考え方を用いて2030年までのロードマップを作成し、しっかりと目標管理をしながら全社で進めていこうということになったのが詳細な経緯です。」
大橋:SBTの取得や、具体的な削減目標に向けてどのような取り組みをされましたか?
担当者:「2024年の11月に中小企業SBTの認定を取得しました。2021年を基準年として、2030年までに42%(約2000t)のCO2を削減するという目標を掲げています。2021年度の基準年では約4700tものCO2を排出しており、その中でも熱源であるダイカストマシンの溶解炉が最もエネルギーを消費していました 具体的な取り組みとして一番大きかったのは、そのダイカストマシンの『溶解炉の完全停止』です。通常、ダイカスト業界では24時間機械を回した方が効率が良いという概念が根強くあります。火を止めてしまうと中の金属が固まってしまうため、炉を止めるためには『湯抜き』といって溶けたアルミをすべて排出する非常に手間のかかる作業が必要になります。また、止めることで機械が壊れてしまうのではないか、再融解までのタイムラグが起きてしまう、金属の品質が悪くなってしまうかもしれない、という懸念もあり、常に火をつけっぱなしにするのが業界の常識でした。 しかし私たちは、土日休みなど休日の前に溶けたアルミを全て汲み出してインゴット(塊)に戻し、電気とガスを完全に止めることに挑戦しました。実は、使わない状態でずっとアルミを溶かして保持しておくと、大気中の水素を吸収してしまい、逆に品質が悪くなってしまうという事実もありました。 この完全停止を年間で88日実施した結果、原油換算で67klもの削減に成功し、連休中には今まで約2000kW消費していた電力をほぼゼロに近づけることができました。 この常識破りの取り組みを実現できたのは、生産管理システムを新しく導入し、『必要なものを必要な時に作る』体制を整え、現場の予定を明確に可視化したことが最大の要因です。いつ次の製造が必要になるかという先の予定が見えなければ、現場は怖くて湯抜きをして炉を止めることはできません 営業がお客様からの注文を明確にし、調達が工程のリードタイムをしっかり把握する。ITの力を後押しに、営業から調達、製造現場に至るまで全社が連携できたからこそ実現できたことです。 他にも、これまで外注と社内を行き来して運搬の手間がかかっていた『バリ取り工程』を社内の加工工程に集約し、搬送ロボットなどを導入して自動化を進めています。また、生産管理システムを活用して『適切な量と納期』を調整することで、バリ取り業者への輸送便を週5回から週2回に減らすことにも成功しました。これにより、輸送用の軽油使用量も月平均794L(2021年度)から550L(2025年度)へと大幅に削減し、効率化と省エネを全社単位で進めています。」
大橋:常識を覆すような取り組みですが、現場の従業員の皆様の反応はいかがでしたか?