欧州気候法(European Climate Law)

****気候変動に対応するため欧州連合(EU)全体で2050年までに「温室効果ガスの排出量を実質ゼロ」(「気候中立」又は「ネット・ゼロ」と表現することもある)にすることを法的に義務付けるものです。

最新の改正案では2040年までに1990年比で温室効果ガスを90%削減するという中間目標が提案されています(2025年10月現在)。

1. 欧州気候法の概要(Overview)

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欧州気候法は、EU全域における気候中立達成を法的枠組みとして規定する法律で、2021年7月に施行されました。EUの持続可能性と環境保護を保証することを目的としており、2050年までにEU全体の温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを目標としています。  条文は全14条で構成され、加盟国による進捗管理、温室効果ガス削減、再生可能エネルギー導入、気候変動への適応策などを包括しており、全政策分野における持続可能な移行を促します。

2. 目的(Objectives)

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欧州気候法の目的は、多面的かつ長期的にEUの持続可能性と環境保護を保証することであり、2050年に温室効果ガス排出量と除去量の均衡を達成することが目標として挙げられています。

また、欧州気候法では、単に排出量の削減を義務付けるだけでなく、再生可能エネルギー導入や省エネ推進により、持続可能な経済移行を促進すること、国際的にはEUがパリ協定遵守を通じたリーダーシップを発揮してグローバルな温室効果ガス削減を補完すること、社会的配慮として公正な移行とエネルギー価格の安定も重視すること、も目的として挙げられています。

さらに、気候変動適応戦略やリスク評価を制度化し、将来的な自然災害や異常気象に対するレジリエンスを強化することも重要な目的となっています。

3. 目標(Targets)

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欧州気候法は短・中・長期の目標を明確に定めて運用されます。

短期的には2030年までに、「1990年比で温室効果ガス排出を最低55%削減する」という法的拘束力をもつ中間目標を設定しました。中期的には、2040年に向けた改正法案では90%削減が提案されており、2050年の長期目標での気候中立達成に向けた段階的かつ科学的根拠に基づく削減路線を明示しています。

これらの目標達成のために、EU全域で統一した計算方法に基づく排出量モニタリング、各国の国家エネルギー・気候計画の策定とレビュー、EU委員会による進捗評価の5年周期実施など、具体的な手続きも設けられています。

これにより、加盟国間の協力と透明性の高い進捗管理を実現し、加盟国が適切に目標を履行することが期待されています。また、目標設定はIPCC報告書などの科学的知見に基づき、社会的・経済的・環境的影響を考慮し様々な経済分野と整合性を持たせつつ進められます。