
大企業の開示ルールがScope3という配管を通って中小企業に及ぶ「構造」については一般的に言われています。ただ、構造の説明だけだと「理屈はわかったけれど、それって本当にうちにも来る話なの?」という距離感が残ります。
そこでこの記事では、日本商工会議所・東京商工会議所が毎年実施している実態調査の数字を手がかりに、要請が実際にどこまで広がっているのかを確かめてみます。
2026年度調査は2026年5月に行われ、全国2,497社が回答しています。
出典:1「2026年度中小企業の脱炭素に関する実態調査」の集計結果について(2026年7月16日) | 日本商工会議所・東京商工会議所(調査期間2026年5月7〜29日、回答2,497社。取り組み実施52.9%、要請14.2%、支援の内訳、期待する支援)
「2026年度中小企業の脱炭素に関する実態調査」の集計結果について | 商工会議所エネルギー・環境ナビ | 日本商工会議所
取引先などから脱炭素に関する要請を「受けている」と答えた中小企業は、2026年度調査で14.2%でした(出典1)。前年(2025年度)の同種の調査では21.3%です(出典2)。
出典:2「2025年度 中小企業の省エネ・脱炭素に関する実態調査」の集計結果について | 日本商工会議所(調査期間2025年4月24日〜5月27日、回答1,828社。要請21.3%、うち支援ありは25.9%、エネルギー価格の経営影響85.2%)
数字が下がったように見えますが、ここは注意が必要です。
2025年度は「省エネ・脱炭素に関する実態調査」、2026年度は「脱炭素に関する実態調査」と、調査のくくり方が変わっています。省エネを含めるかどうかで母数の受け取り方が変わるため、「要請が減った」と読むより、「調査設計にかかわらず、だいたい1〜2割の中小企業がすでに要請を受けている」と読むのが妥当だと思います。
そして、この1〜2割は業種にまんべんなく散らばっているわけではなく、要請が多いのは製造業、建設業、石油卸売・燃料小売・電気ガス熱供給といった業種です(出典2)。つまり、特定のサプライチェーンに組み込まれている企業ほど、要請を受ける確率が高くなります。「自社の業種と取引構造なら、来てもおかしくないか」を一度考えておく価値があります。
少し古いデータですが、静岡県と企業脱炭素化支援センターが2022年11月に実施した「県内中小企業の脱炭素化への取組に係る実態調査」(有効回答659社)でも、取引先(発注元・親会社・元請等)から「既に要請を受けている」企業は11.4%、「今後、要請を受ける可能性がある」が46.1%でした(出典3)。当時すでに、県内でも1割強の中小企業に要請が届いていたことになります。

| 調査 | 時期 | 「既に要請を受けている」 |
|---|---|---|
| 静岡県・企業脱炭素化支援センター(659社) | 2022年11月 | 11.4% |
| 日商・東商(1,828社) | 2025年5月 | 21.3% |
| 日商・東商(2,497社) | 2026年5月 | 14.2% |
出典3:令和4年度 静岡県内中小企業の脱炭素化への取組に係る実態調査結果報告書
attachment:4e022d16-79d3-4d6b-aa5e-c430ab481d8f:R4_jittaityousa.pdf